90年代ファッション好きの過去と現在

お気楽メンズファッション日記

ゴーストスタイリスト

ある雑誌を見て

 

自分がまだ現役スタイリストだった頃、ある雑誌に掲載されていた大御所人気女性スタイリストがスタイリストについて語っているインタビュー記事に目がとまり一読した。自分は基本メンズファッション専門だったのであんまり女性スタイリストに関心はないんだが、その人のメンズのスタイリングが好きだったので、唯一女性の中で気になるスタイリストだったからだ。

 

自分にとっては耳が痛い話

 

そのインタビューの中で、業界のレベルが低くなっていると危惧している部分があって、かなり前に読んだ記事なんで詳細な内容は忘れたが、簡単にいうと最近の若手スタイリストはなってない!的な話で、撮影中でも平気でおしゃべりしているような現場が多いときくが、私の現場ではそんなことはありえない。みんな真剣そのものです。みたいな話だった。

 

あーーーー耳が痛てえ。いや、いわれたのではなく、記事読んだだから目が痛いか。そんな言葉ないか。とっても目にやさしくない。正論すぎる。とにかく色々心当たりがあって反省した。例えばモデルがポーズとって、カメラマンがシャッターをきってる後ろで、撮影を見ているときに、さらに後ろから昼飯どーしますか?って編集者に話しかけられたら、昼飯会議はじまっちゃいますよね?ちょうど腹へってきてたし。編集者も緊張感ないしタイミングが悪いんだからー。もう。スムーズに昼飯の手配するのも仕事だけど。でも、やっぱりいけてないですよね。自分がカメラマンならかなりイラッとすることでしょう。もちろん毎回の撮影がそんなにユルくはないけれど、慣れたチームの撮影とかだと世間話もするし、カット数が多いときは、集中力が切れると、そんな時間もないとやってられないじゃないですか。と、まあ言い訳したところで、だからおまえは3流だったんだという声がきこえてきます。それは否定しないです。

 

自分のテリトリーにもやってきた

 

そんな、勝手に一人で反省してから、しばらくしてからのこと。自分が当時よくお仕事していたメンズファッション雑誌の表紙の撮影で、スタイリストはタレントさんの指名で、その大御所人気女性スタイリストになったときいた。

 

力のあるファッション雑誌は、タレントを起用する際には、タレント専属のスタイリストを断り、編集サイドが人選したスタイリストを使いたがる傾向にあるが(雑誌のテイストやイメージによせるため)、それもタレント事務所の力が強ければかなわない。まして、その雑誌はそこまでパワーのある雑誌でもなかったので、タレントのマネージャーに言われるがまま、大御所人気女性スタイリストの登場となったわけだ。

 

でも編集さんの話によれば登場と思ったら、登場しなかったらしい。その雑誌のスタイリストの仕事の流れ(過去の自分の場合)を、ほんとにざっくり説明すると、まず編集者と2人で打ち合わせ。後日、カメラマンを交えて3人で打ち合わせ。そして洋服借りてコーディネイト組んで、編集者とコーディネイトチェック(撮影当日にやることも)。そして撮影本番。その後写真セレクトして、衣装クレジットなどを提出して、校正してフィニッシュですとなるんだが、なんとこの大御所人気女性スタイリスト、打ち合わせにもコーディネイトチェックにも撮影現場にも写真セレクトにも、最後の最後まで、1度も姿をあらわさなかったそうです。(なんて優秀なアシスタントがいらっしゃることでしょう!)

 

でも。ちょちょちょ、待・て・よ!!と言いたくなる。撮影現場に来ないというのは、テレビ収録とかでは、よくあるパターンだし(雑誌の撮影ではあんまりきかないけど)100歩譲って、売れっ子なんでしょうからしかたないとしても、打ち合わせにすら来ないとは、どーゆーつもりなんだ?仕事なめてんのか?いや、今回の仕事に関しては完全になめてたんでしょう。でもそんなテキトーにやるくらいならお断りすればいいのではないだろうか。

 

本題です!

 

そしてここが本題です!仕事に一度も来ないあなたに、がんばって撮影現場で働いている人間の、ちょっとした気のゆるみのおしゃべりを批判する資格はありませんからぁ!ざんねんっ!!あー、すっきりした。

 

また別のとある人気スタイリストがいっていたことだが、例え同じ服を同じモデル着せるとしても、自分が1番カッコよく着せられると。なんという自信家だろうと思うが一理ある。例えスタイリングが決まってたとしても、襟や袖の処理、ボタンやファスナーの開け閉め、ブラウジングなど着せ方で見え方は大きく変わる。同じお金払うなら弟子より大将に寿司握ってもらいたいのと同じだ。スタイリングは会議室で起きてるんじゃない。現場で起きているんだ!だからなるべく現場には来てね!

 

発売された誌面のスタッフクレジットをチェックすると、スタイリストの所は完全に個人名ででていました(いなかったくせに)。個人名ではなく○○○○事務所とかチームにしていれば全然納得できるんですけどね。ユニクロUみたいに、ルメール率いるデザイン集団みたいな感じで○○○○率いるスタイリスト集団として活動した方が、嘘がないと思うんですが、ちょっと検討していただけませんかね?この状態はある意味詐欺ですからね。読者だましちゃいやだよ。で、肝心のスタイリングはというと、これがまた、悔しいことに、めちゃくちゃカッコよかったです。個人的には。ボロボロの古着のレザーを着せたのが印象的でした。まあ、全然そういう古着テイストの雑誌ではなかったので、編集者は嫌がって、レタッチでかなりキレイに(レザーの服を)したようですが、雑誌のテイスト関係ない的な媚びてないところが(なめてるんだから媚びるわけないか)、さすがと感心しちゃいました。

 

ここからは勝手な想像だけど、たぶんリースもご本人は行ってないんだと思う。アシスタントにこんなイメージで借りてきてと頼み、アシスタントが集めてきて、アシスタントが借りてきた服をきれいに見やすいようハンガーラックに陳列した状態で、そっと声をかける。「先生、スタイリングお願いします」。そこでようやく重い腰をあげ、ちゃちゃちゃちゃっとコーディネイトを組むとこだけやったんでしょう。たぶん。仮に最後のコーディネイトも全部アシスタントにさせていたとしたら、それはもうアシスタントではなく、ゴーストスタイリストだ。いや、やっぱり最後のスタイリングだけはご本人だろう。あの古着のジャケットだもんな。

 

でも、どんな人か全く存じ上げないがアシスタントの方はすごい。最後のスタイリングをしていなくても、ここまでやっていれば、やはりゴーストスタイリスト、いや現役時代の私よりは、よほどできるスタイリストということでオッケーだと思う。